こんにちは、ウェブがかりのサチコです。
水曜にセミナーへ参加し、興奮冷めやらぬ勢いで書き上げたその1から2日。
その間に、Togetterでまとめが本日の特集に追加していただけたり、
Twitterのフォロワーさんが増えたり、反響を感じてとてもうれしかったです。
9/18選ばれる会社やデザイナーになるためにin福岡 - Togetter
今回も引き続き、レポートしてまいります。
その2は、ベイジのデザイナー荒砂さんのセッションをまとめたいと思います。
荒砂 智之さん「50の悩みから紐解くデザイナー成長のための10のヒント」
自分を取り巻く悩みのサークル
まずは荒砂さんの自己紹介から。
さっそくSNSなどなどが載せられていて
「キーマンが情報発信してるってこういうことねー!」
と思いました。
Tomoyuki Arasuna / baigie inc. (@tomoyukiarasuna) | Twitter
TomoyukiArasuna.com | 株式会社ベイジのアートディレクター・デザイナー、荒砂智之のブログです。
お恥ずかしながら荒砂さんの記事はいくつか読ませていただいていたものの、書かれていたのが荒砂さんだと認識できてなかったです。
これからは意識できるからありがたい。カラーバス効果、素晴らし。
さて、冒頭では今回のテーマを選んだ背景を少しお話。
「みなさんが持つベイジの印象は?」という投げかけで、会場からポジティブで完璧なキーワードが出て来ます。
ですが、「実はベイジも毎日たくさん失敗するし、毎日めちゃくちゃ悩むし、毎日壁にぶつかってます」という切り返しをされ。
16年の経験で50くらい出てきた悩みから、これがいいんじゃないか?と導き出した「10のヒント」をこっそり教えてくれました。
概ねデザイナーの悩みの全体像としては、大きく4つ。
- 個人:デザインスキル(時間、クオリティ、表現力、説明)
- 対人:教育、マネジメント、顧客とのやりとり
- 企業:所属企業(職場)
- 市場:キャリア
これらを上から順番にお話ししてもらいました。
セッションの随所でオススメの本をご紹介いただいたので、こちらは最後にまとめてご紹介します。
個人の能力における悩み
- 時間
まず、時間の使い方についての悩みだと、例えば与えられた情報で制作できないとか、わからないままとりあえず作ってるとか。
それって、情報を理解せずにデザインしちゃってる状態。
ここで1つめのヒント。
1.情報収集・理解・整理にこそ時間を使え
デザインは料理と同じで、必要な工程をこなさないとうまくいかないよ、と図解が。
料理は、こんな風に進めます。
・知る(誰に食べてもらうの?)
・考える(レシピや材料を検討する)
・作る(料理する)
これを、デザインに照らし合わせると
・知る(見える化、整理)
・考える(優先度付け)
・作る(表現する)
ついついデザインって「作る」に目が行きがちだけど、情報を整理できてないと手戻りが多いですよね。
時間の使い方が上手い人は、知ると考えるに70%、作るに30%くらいの配分をするけど、時間がないという人は大体が逆の割合になっていくんだそうです。
私は立場的にデザイナーへ情報を渡す方が多いので、渡す側も工夫していくことが結果的にいいデザインになるんじゃないかなと感じました。
世の中のディレクターさん、ぜひ「いい感じに作って!」みたいな雑な情報は止めていきましょう(笑)
- クオリティ
クオリティが安定しなかったり、自分のデザインが垢抜けない、みたいなお悩みは、意識的にクオリティをコントロールできてない状態。
ここで2つめのヒント。
2.まずデザインの基本原則で装備を固めよ
これはスイッチの鷹野さんがセミナーでお話しされているのを何度か聞いたのですぐにアレだ!と気づけました。
・整列
・近接
・コントラスト
・反復
荒砂さんはバナーでこの4原則をつかってブラッシュアップした例を見せてくれて、とてもわかりやすかったです。
ご自身も、社内外にスライドで言語化して共有することで、初めて知識になったのだそう。
ブログの記事にもされてましたので、こちらもどうぞ。
http://tomoyukiarasuna.com/principle/
- 表現力
不得意な分野があったり、パターンが同じになりがちというお悩みは、自分自身のセンスを磨く活動計画が立てられていない状態。
ここで3つめのヒント。
3.常にセンスを磨き続ける活動を怠るな
そもそも、不得意な分野があるということはインプットが足りてないという証拠でもあると。
センスはジャッジの連続から生まれる、というのがしっくりくるそうでご自身もデザインの引き出しを増やすために、とにかくデザインの模写などをがっつりやられていたそうです。
そして、継続するだけではなくて、ある程度の継続ができるようになったら「学びの解像度」を上げていくことが大事なのだそう。
例えばコンテンツの幅やグリッドのルール、配色の工夫、読みやすい文字量、レスポンシブ時の見せ方の変化のセオリーなどなど、着眼点を細かくして、学ぶポイントを絞っていくというやり方をおすすめされていました。
- 説明
デザインをなぜそうしたのか?誰かに説明がうまくできない、そんなお悩みはデザイナーなら誰しも一度は感じてる気がするのですが、これは伝えたいことを正確かつ論理的に言葉にする力がない状態。
ここで4つめのヒント。
4.言語化能力と論理的思考を鍛えよ
言語化が必要なのは、解決したい課題に対して有効かどうかを関係者も理解したいし、確認したいからなんですね。
だから、伝えるための言語化の前段階として、制作中などにメモを取り、そこから3つにまとめると伝わりやすいとのこと。
3つにするのは、よくプレゼンのコツで出てくるテクニックです。
マイクロソフトの西脇さんも確かウェブ解析士会議のデモストレーションで見せてくれたんじゃなかったかしら。
論理的かどうかを確認するには、2つを逆転させて確認するのがコツ。
例)
採用希望者は楽しく働きたい→だからビジュアルは青空の明るいイメージが良い
↓
ビジュアルは青空の明るいイメージを使った→だから採用希望者は楽しく働ける
わけわかんないですが、これ言いがちだと思います。
シンプルな言葉で誰にでもわかりやすい説明を心がける、これがとにかく重要。
対人関係における悩み
- 教育
後輩からの質問に答えられなかったり、教育なんて難しいからそもそもやりたくないと思っていたりするお悩み、これ実は自分が専門的な知識を幅広く勉強できてない状態。
ここで5つめのヒント。
5.アカデミックな専門知識を強化せよ
仕事で経験できるのは一定の範囲で、「一般的にこうだよ」と語れなかったりするんですよね。
だからこそ自分の経験にあぐらをかかず、専門書籍で網羅したり、自分で調べてみたりして知識をさらに掘り下げていくことを怠らないようにね、というお話しでした。
もう一つ、同じような説明を別の人にすることになったり、新人からの「ちょっといいですか?」が減らないみたいなお悩みについてもヒントが。
実はこれ、教える側が「目の前のタスク消化」になって、長期的に見た時の効率化に目を向けていない状態。
ここで6つめのヒント。
6.ノウハウ・ナレッジはとことん蓄積せよ
組織が大きくなるにつれ、必ずナレッジ共有は課題に浮かぶんですよね。
ベイジさんでは入社前から課題を出したり、入社時にデザインのルールを共有したり、業務に入ってからはフィードバックやノウハウの共有を行ったりしているそう。
後輩からの質問をナレッジ化のタネと捉えるのは、明日からでもできそうですね!
私は少しやれてるところがあるなと思ってて。
後輩へある程度、引き継ぎの際にドキュメントを作って渡して、質問が来ると
「ごめん、この話は入れてなかったかも。次の人がわかるように追記して!」とあえて後輩へもナレッジのドキュメントを充実させるお手伝いをしてもらうようにしてます。
すると、自分が誰かへ伝えるために書くので、当人も理解が深まるんですよね。
意外に人は与えられるだけのモノは安心して見ない、と痛感しているので、あえて余白を持たせる作戦をとるようになりました(笑)
- マネジメント
人によって問題が起きる、聞く耳を持ってくれないなど、マネジメントは組織が大きくなると増えて来るお悩みですが、これは価値観や特性に起因する相手の行動に振り回されてる状態。
ここで7つめのヒント。
7.相手を知ってコミュニケーションせよ
自分がとにかく相手に合わせるということと、過去に成功したやり方が万能だと思わないこと、と話されてました。
ここは先ほどのナレッジとかノウハウの話とも共通してるとは思うんですが、自分がAのやり方で教わってても、同期はBのやり方で教わってるかもしれないんですよね。
ということは、自分が後輩に教えるときはAだけじゃなくてBのやり方を選ばないと合ってないかもしれないという。
荒砂さんはサイトの更新について、自分の感じていることと相手の感じていることのすり合わせをやっていく中でこれを実感したそうです。
個々の気持ちに寄り添うって、エンドユーザーには心がけてるのに実は社内ではできてないのかもしれないです。一緒に歩く、一緒に取り組むスタンスを心がけたいと思いました。
- 顧客折衝
指示通りに修正してもまた修正…。情緒的なイメージで全然どうしたいのかわからない要望…。よく聞く話ですよね。
このお悩みは、他者の要望を満たすことがゴールになっていて、自分自身が振り回されている状態。
ここで8つめのヒント!
8.仕事のゴール地点は自分自身で決めろ
顧客の要望は必ずしも正解ではないし、顧客の言う通りにだけするとイニシアティブを失います。だから、プロのデザイナーとして「こうすべきです」と言うのが重要とのことでした。
デザイナーは顧客が描くイメージの理想を上回る形で具体化するのが仕事です。
だから、相手の示すゴールを鵜呑みにせず、より正しいゴールを示して導くこと!
でも、こんな依頼者は避けた方がいいよ、とのアドバイスもありました。
・指示が細かい
・上から目線
・実績になるから、次に繋がるからと言ってくる
やばい、めっちゃわかる…。
企業における悩み
仕事が終わっても帰りづらいと感じたり、退職が続いたり、チャットで特定の人の陰口が横行したり…職場に対するストレスが多くグチばかりが頭に浮かぶ状態。
こんな時の9つめのヒント。
9.在籍のメリットとデメリットを比較せよ
働き方は個々人に決定権があるので、見極めること。
そして、今の環境で働くメリットとデメリット、転職するメリットとデメリットを言語化して見ること。
もし転職するメリットが大きいなら思い切って転職する。というステップを示されました。
セミナーとはいえ、代表の枌谷さんの前で言えるってすごくないですか?
私は流石に言えないかもです、社長の前では。
・収入
・興味
・成長
・働きやすさ
・人間関係
・安定性
これらの項目でそれぞれメリットとデメリットを言語化してみましょう、と。
一方で、一時的にきつくなる時期があったとしても、得られるメリット(例えばスキルアップだったり、賞与だったり)が大きいなら転職しなくて良いかもねというお話もありました。
むしろ、危険なのは転職するデメリットが多いのに転職せざるを得なくなった時。
自分では防げないレベルの問題が起きない保証はこの世にないです。
だからこそ、実力以上に評価されていたり、自分のいる業界の事情に疎かったり、会社のメンバーとしか交流していない人は本当に要注意。
メリットとデメリットは把握しつつ、いざという時、路頭に迷わない力を身に付けて置くこともすごく大事なことだよ、という締めでした。
市場における悩み
じゃあ実際に転職するとなった時、いろいろ悩みが出てきますよね。
大体はデザイナーという市場の中で、自分の価値がさほど高くないということに薄々気がついている状態。
ここで最後のヒント。
10.評価の基準は社内でなく市場に置け
転職が当たり前になっている今、その会社でしか通じないスキルは危険でしかなく、市場の中でも通用するスキルを磨き、時代に合わせたアップデートを心がけるのが大事ですよ、とのことでした。
荒砂さん自身も転職で非常に苦労された経験から、上記のような心がけを誓ったそうで、その後は「能動的・自主的に起こした活動」が自分の価値を高めてくれたのだそう。
現代社会は、VUCA(ブーカ)と呼ばれる環境に置かれていて、
「Volatility」(変動性・不安定さ)
「Uncertainty」(不確実性・不確定さ)
「Complexity」(複雑性)
「Ambiguity」(曖昧性・不明確さ)
の頭文字を取った言葉で、環境が複雑になり、想定外の事象が発生するため、将来の予測が非常に困難な状態を指します。
つまり、時代や市場の変化に対応して、自分を変え続けていける人が、市場価値の高い人なのだということでした。
荒砂さん自身が、情報発信だけでなく情報収集や学習をやめない方だからこそ、すごく説得力があるお話だったと思います。
デザイナーの後輩が一心不乱にメモを取ってくれていて、何か明日からの仕事に生かしてくれたら嬉しいなとしみじみ思いました。
私はデザイナーと仕事をする立場なので、デザイナーが成長していくにあたってどんなことを意識してもらうと良いのかを考えるヒントをたくさんいただけなたと思いました。
一緒に参加した後輩だけでなく、他のメンバーにも声をかけてみたいと思います。
荒砂さんから紹介いただいた、おすすめ書籍
佐藤可士和の超整理術 (日経ビジネス人文庫) 佐藤 可士和 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/453219587X/
ノンデザイナーズ・デザインブック Robin Williams (著)
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センスは知識からはじまる 水野 学 (著)
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ロジカル・シンキング (Best solution) 照屋 華子 (著)
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P&G式伝える技術 徹底する力―コミュニケーションが170年の成長を支える (朝日新書) 高田 誠 (著)
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人を動かす 文庫版 D・カーネギー
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イノベーション・スキルセット~世界が求めるBTC型人材とその手引き 田川 欣哉
https://www.amazon.co.jp/dp/4479797033/
お二人への質問タイム
こちらは下記から見ていただけると良いかと思います。
9/18選ばれる会社やデザイナーになるためにin福岡 - Togetter
会場で質問しやすいようにと、下記のサービスを使われていました。
これならシャイな人も質問しやすくて、気になる質問がどれなのかわかって良いですね。
枌谷さんも荒砂さんも、それぞれの立場から組織に対してポジティブに行動を起こされていて、かつご自身も研鑽をいとわないというのが本当にすごいと思います。
積み重ねがものを言うことだと思うので、まずは継続から初めて、質疑の中で荒砂さんがお話されていた自分の中の「学習エンジン」を止めないようにしつつ、解像度をあげていきたいと思います!
枌谷さん、荒砂さん、そして主催のリクトさん、ありがとうございました!
面白かったと思ってくださった方は、ぜひその1もお読みいただけるとうれしいです。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。